【ジェンダー】『Know My Name』 by Chanel Miller 感想・レビュー
こんにちは。ゆずまるです◎
今回は、#MeTooムーブメントに関連した本に挑戦しました。スタンフォード大学のパーティでレイプ被害にあった本人による回顧録『Know My Name』Chanel Milellrです。
【一言でいうと】
- いかに性的暴行が人の人生を破壊していくのか、当事者の声
- セクハラがいかに、立証しにくく、卑劣な行為であるか、嚙みしめられる
・・・です。
【内容】
- スタンフォード大学のパーティにいった作者が、お酒の勢いでブラックアウトし、意識のないうちにレイプ被害を受けます。その性的被害の経験がいかに彼女の人生を傷つけたか、本人の声で書かれています。
- 事件は、目撃者がいたことなどにより、裁判に持ち込まれます。ですが、そこでの加害者(Brock Turner)の弁護士と作者のやり取りも、彼女をひどく苦しめるもので、性的暴行の立証過程がいかに苦しいものなのか、思い知らされます。
- 通常、プライバシーの観点から、被害者の本名は公表されず、仮名が使われます(彼女の場合は、Emily Doe)。ですが、作者は本名・顔もパブリックに公表し、この本を通じて、社会に彼女の経験を伝えています。
【洋書としてのレベル】
- 作者の文才も素晴らしく、やや見慣れない単語を使っていますが、読めなくはないという感じです。
【感想・考察】
- まず、僕は男性で、日本で男性として生きてきたので、そのフィルターを通した感想になります。
- 僕自身は、性的暴行(痴漢を含め)を経験したことがなく、友達の女性からうっすらと聞いた程度ですが、この本を通して、性的暴行がいかに卑劣なのかということを痛烈に感じました。
(女性にとっては「今更?」って感じでしょうが。。。) - 彼女は被害を受けたショックから、仕事もうまくいかず(結局、退職)、家からも出られないような日々を長く続けます。そして今も、経験から立ち直ることはない、と言っています。性的暴行が精神的にいかに長く続くのか、彼女の経験は伝えています。
- また、彼女は以下のようなことを、ニュースのコメント欄などで言われます。なぜ、事件を被害者の責任に帰するのか、読んでいて悔しくなります。
「ブラックアウトして、ガードを下げた彼女の方が悪い」
「何度も過去ブラックアウトしたことがあるのは、だらしない証拠」
「露出が多い服をきているのは、性的に積極的だったのでは?」 - また、加害者側の主張は以下のとおり。加害者の有望性やこれまでの周りからの評価は、被害者の精神的苦痛と全く関係ないのですが。。
「ブラックアウトしたとは認識していなかった。同意のもとだ」
「加害者は将来有望のスタンフォード生。周りからの誠実な評価だ」
「この一回の事件で、彼の人生を台無しにするのはひどい」
「彼も、名声や学業など、すでに多くのものを失っている」 - また、裁判がどうあるべきかも、難しい問題です。
期日が何度も延期され、彼女の苦しさせたうえ、裁判当日では、事件当日の出来事、病院のベッドで目が覚めた時の様子など、思い出したくもないことを細かく聞かれ、彼女を傷つけるものでした。 - そもそも、この事件は目撃者がいたことで立証までこぎ着けたそうなのですが、多くの事件はプライベートなものでそもそも裁判まで行きません。そして裁判過程も苦しいもので、結果を保障されていません。
この事件は彼女に厳しい判決になりました。彼女が「いい景色が見えると信じて、やっとのことで登った山頂」はがっかりするもので、このようなことから、本当に多くの女性は声を上げることを諦めているでしょう。 - 日本でも、職場のセクハラトレーニングなどで、「男性上司が女性部下を会食に誘うのはだめらしい」とか、「向こうがセクハラと思ったらそれだけでだめらしい」とか、形式的なものになっているように見えます。
むしろ、性的暴行・セクハラがいかに立証しにくく、本当に卑劣な構造になっているかを共有したほうがいいのではないでしょうか。
ゆずまる◎