【アパルヘイト】『Born a Crime』by Trevor Noah の感想・レビュー
こんにちは。ゆずまるです◎
今回は、僕を洋書を好きにしてくれた、Trevor Noah の『Born a Crime』です。南アフリカ出身のコメディアンである Treveor がアパルトヘイト政策の下での原体験をつづっています。僕に新たな世界を教えてくれた、お気に入りの本です。
【一言でいうと】
- The Daily Show の人気ホストである、Trevor の原体験。アパルトヘイト下で、黒人と白人の両親のもとに生まれ、育った経験をつづっています。
- コメディアンの Trevor だけに、面白おかしく書かれていて、笑わされます。一方、内容がアパルトヘイトやドメスティック・バイオレンスなど、シリアスなものも含んでおり、そのギャップに引き込まれます!
・・・という感じでしょうか。
【内容】
- アメリカのテレビ番組には、政治をネタにしたトーク番組がいくつかあるのですが、著者の、Trevor Noah は The Daily Show の人気ホストです(今は The Dialy Social Distance Show とも言っていますw)。
- 彼の育った南アフリカは当時、アパルトヘイト下であり、白人の父親と黒人の母親との間に生まれた彼は、厳格な差別制度の下で、微妙な立場に置かれます。ストーリーはほとんど、この出自を中心に回っていきます。
- また、結局、母子家庭で育っていくことになるのですが、母親の再婚相手との関係だったり、再婚相手によるドメスティック・バイオレンスもテーマの一つのような気がします。
- 彼の、鋭いレイシズムに対する洞察にうなされたり、シリアスな内容をコミカルに書く彼の強さを感じたり。面白おかしさに加え、多くの示唆があるところが、多くの人に愛されている理由かなと思います。
【洋書としてのレベル】
- 内容に引き込まれたので、あまり語彙などは気にならず、読み進めることができました。
【感想・考察】
- 色々なシーンがあるので、読み手それぞれに、心に残るものがあるかと思いますが、僕にとっての印象的だったものを書きたいと思います。
- Trevor が、確か刑務所か何かに入れられた時、刑務所内に自然発生的にできているグループのどこに属するのか逡巡するシーンがあるのですが、そこで彼は、「人は同じグループに属していると思っていた人が、他のグループと交わっているのを見ると、不愉快に感じる」といった洞察をしたと思います。
- あまり考えたことはなかったのですが、これはその通りだなと僕は感じています。例えば、アメリカに住んでいて、僕と同じ日本人っぽい人が完璧な英語で、人と交流し、活躍しているのを見ると、自分の英語コンプレックスとも相まって、「なにくそ」と内心思ってしまいました。
- 自分は、英語で苦労していて、「日本人なんだから、日本人なまりの、ちょっと下手くそな英語を話すものだ」と勝手な偏見を持っていたのですが、その勝手な偏見に相いれない人を見ると、ちくっと苛立ちを感じる、そんな構造だったと思います。
違う人種の人に対する対立、という文脈はよく見ますが、同じ人種・グループ内での対立、足の引っ張り合い、という洞察はあまり触れたことがなかったので、僕の中に残っています。 - もう一つあげるとしたら、Trevor の母親がDVを受けて、警察に駆け込むシーンで、(もちろん男性の)警官から、「いやいや、それは家庭内事情だから、警察の仕事じゃない」「旦那もたまには、イライラするときもある」といった態度で、取り付く島もないシーンです。
- これは、ジェンダー・バイオレンスの卑劣な構造を象徴するようなシーンで、男性優位な価値観が行政サイドにも広がっていて、そもそも女性の意見を退けていました。すると女性が行政を信頼しなくなったり、「警察に相談したこと」に対する男性からのさらなる暴力を生んでいくのですね。
この話は南アフリカでのものですが、日本やグローバルでも起こっている問題なのではないかと思います。
以上です。 ここには、あまりコミカルなシーンは書きませんでしたが、おかしくて笑うことも多かったです。是非、読んでみてください!
ゆずまる◎