【レイシズム】『Caste』by Isabel Wilkersonの感想・レビュー
こんにちは。ゆずまるです◎
今回は、ずっと読みたかったんですが、しばらく積読になっていた本です。『Caste』です。これもオペラブッククラブでも取り上げられていましたし、オバマ大統領のおすすめ本にも入っていましたね。
【一言でいうと】
・・・という感じですね。
【内容】
- 作者の、Isabel Wilkerson は The New York Times での記者経験もある著名なジャーナリスト。長年の取材経験から、アメリカのレイシズムについてどのような特徴があるのか、解剖していきます。
- 興味深いのは、もちろんアメリカの内容が多いのですが、インドのカースト制度や、ナチス政権下のユダヤ人迫害との比較も交えて、グローバルに各国の人種差別制度の共通点を見出していく点です。
- カーストはインドのものと僕は理解していて、作者の主張は新しいように思えたのですが、なんと1940年代からアメリカにもカーストがあるという主張もあったそうです (Allison Davis)。人種差別が社会の根底や前提となっていおり、人種カーストが過去・そして今のアメリカ社会を形作っている。しかも、個人個人の意志や思想にかかわらず、僕らは、人種差別を根底とした社会の上に乗っているんですね。
【洋書としてのレベル】
- 全体として読みやすいと思いますが、なかなか根気がいりました。
【感想・考察】
- アメリカに住んでいると、公共サービスが行き届いていないのが目につきますし、それをめぐる政治闘争は凄まじいものがあるなと感じます。しばらく、僕はその理由を考えていました。例えば、、
✔ イギリスからの独立のきっかけとなった、税に対する嫌悪感
✔ これも独立当初から続く、分権的なシステム(州の力が強かったり、大統領と議会の争いもすごい)
✔ 個人主義。あるいは、移民の国ということもあり、多様なバックグラウンドを持つ人が多い中、社会的合意が難しい などなど
- その中でこの本は、人種カーストというレンズで、見事に今の社会をとらえていて、僕の考えを変えてくれました。アメリカが現在のように失敗している理由を一つ上げるとすると、レイシズムなのではないか、ということです。
- 例えば、トランプ政権の支持者は、白人の労働者層。政府が所得の再分配を拡大することは、彼らにとっても恩恵であるはずなのに、どうもむしろ、白人至上主義に引っ張られて行ってしまう。経済階層で、白人と他人種が一つの政治基盤をつくれないのは、やはりレイシズムが大きいと感じます。
- 日本でもこうした社会に組み込まれている差別制度があるのか、ということを当然考えたのですが、(1)部落、アイヌ人への差別、(2)貧困の連鎖、(3)世界最低レベルの男女平等など、思い浮かびます。どの法律も差別を認めていないですし、人に聞いたら「差別はよくない」と当然答えるでしょう。ただ、目を凝らして社会を見ると、もしかしたら、違う世界が見えるのではないか、そんなことを思いました。
- 最後に、インドとドイツとの比較については非常に興味深かったのですが、内容が少なかったので、今後学んでいきたい課題として残りました。作者はアメリカ社会のプロなので、やはり、本の中ではアメリカの部分が一番読み応えがありました。
以上です!是非読んでみてください!
ゆずまる◎