【マルコムX】『The Dead Are Arising: The Life of Malcom X』by Les Payne and Tamara Payne の感想・レビュー

こんにちは。ゆずまるです◎

今回は、今年のピューリッツァー賞の受賞作である、マルコムXの評伝『The Dead Are Arising: The Life of Malcom X』について書きたいと思います!

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 【一言でいうと】

  • マルコムXの生い立ちから暗殺までを、著者の超入念な取材力でダイナミックに描き切る!

    ・・・という感じですね。

【内容】

  • マルコムXは、アメリ公民権運動の時代のリーダーの一人です。黒人の人種隔離政策に反発し、黒人と白人は相いれないとか、人種差別をする白人は悪魔だとか、「黒人は白人より劣っている」という認識は全くの間違いだとか、急進的な面もありましたが、黒人の地位向上に向け尽力しました。

  • この本は、マルコムXの幼少時代、ギャングスタ―としての青年時代、そしてムスリムへの改宗と公民権運動のリーダーとしての活躍、そして暗殺、、、と彼の激動の人生を作者の凄まじい取材力で描き切きります。

  • 作者は、マルコムXを直接知る方へのインタビューや、(どうやって手に入れたか分かりませんが、)FBIの資料を積み重ねて、多面的・重層的にファクトを積み重ねていきます。
    マルコム時代も自伝を書いているのですが、この本の中には頻繁に、「マルコムの自伝ではこう書いてあったけど、この事実は正確ではない(ややマルコムのより盛られている」みたいな記載が出てきます。それだけ多面的に取材をした作者だからこそ、本人の自伝に対してですら、ファクトチェックをできるのですね。

 

【洋書としてのレベル】

  • かなり語彙が難しいと感じました。そして本が500ページと長いです。

【感想・考察】

  • この本を読んで、なぜマルコムXの人生が人を引き付けるのか、というのを僕なりに考えてみたのですが、一つは、彼の人生の中でターニングポイントが多く、彼自身が変化し続けていることなのかなと思いました。

  • 例えばマルコムは、NYやボストンではギャングスタ―としていたのですが、白人の女性らと結託して、盗みなどの犯罪を犯しますが、その罪に問われたときに、白人の女性らはその罪を黒人のマルコムらに被せたということがありました。
    その結果、マルコムは数年の間、牢屋に入るのですが、その経験がマルコムの白人への失望を生み、Nation of Islam への改宗へとつながっていくとか。

  • あるいは、Nations of Islam のリーダーがKKKと秘密裡に団体間の交渉を始め、マルコムもその担当に当たらせるのですが、マルコムは白人至上主義のKKKと密約を結ぶことに疑いを持ち、ひいては、Nation of Islam 自体から離れていくとか。

  • はたまた、メッカを訪れたときに、人種にかかわらず、どんな人種の人であっても、同じ信仰の精神を持っていた人々が等しく扱われていたことに感化され、彼の思想が柔軟化した、とか。

  • このように、マルコムの人生のターニングポイントごとに、彼の思想が発展・変化していくそのダイナミックさというのが、彼の人生の魅力の一つだと思います。

  • そして、もう一つ印象的なのは、やはり彼の強いメッセージですね。「差別される側の黒人自体が自己肯定感をもつよう、変わる必要がある」という主張は、今なお強く胸に響くものです。人種だけではなく、社会の中で不当に抑圧されているあらゆるグループの中でこうした議論があると思います。
    マルコムはそれをストイックに実践し、声なき声を代弁し、国際社会に対してもそれを訴えていきました。彼の理想や強いメッセージというのは魅力的ですね。

以上です!マルコムの人生や当時の状況に関心がある方には素晴らしい本だと思います!

 

ゆずまる◎