【政治】『Our Time Is Now』by Stacey Abrams の感想・レビュー
こんにちは。ゆずまるです◎
今回は、2020年のアメリカ大統領選・2021年の上院選で一躍注目された、ジョージア州の選挙制度についての本、『OUR TIME IS NOW』です。
トランプ前大統領が11月の選挙結果で、敗北が分かった後も、「この選挙は嘘・詐欺だ」と発言を繰り返していました。この本は、そのトランプ前大統領がなぜ民主主義の根幹でもある、選挙の正当性を疑う発言を繰り返してたか、その意図が分かります。
【一言でいうと】
- アメリカの選挙制度そのものが、社会・経済的に不利な人を、「選挙に行くのを難しくする」ような仕組みになっている
- そして、選挙にこない・行かない層については、政治家は考慮しなくていいので、社会・経済的に不利な人が、政治的にも阻害されていることが分かる
・・・という感じでしょうか。
【内容】
- 著者の、Stacey Abramsは、ジョージア州議会の民主党の代表から、黒人女性初の州知事になることを目指して、ジョージア州知事選を戦った人です(結果は僅差で敗北)。
- 彼女の選挙戦は、「選挙制度そのものによって、選挙に行きにくくされている人」たちを啓蒙・動員するというユニークなものでした。
- そして、どうやって「選挙に行きにくくする」ことが行われているかというと、
- 日本では、投票日が近付いてきたら、勝手に自治体から投票チケットが送られてきますが、アメリカでは選挙権を得るために、「登録」することが必要です。
- この登録手続は、免許センターがやることになっていて、そうすると、免許がない人は、車を買える余裕がない人は、、、選挙のための登録すらしにくい。
- 選挙場を距離的に遠くする。あるいは、長蛇の列をつくる(2時間待ちなど)。すると、車がない人、仕事を抜けられない人は投票できません。
- これに加えて、選挙前投票や郵便による投票を、受付期間を短くしたりして、やりにくくする。そうすると、選挙日に仕事がある人などはやっぱり選挙に行きにくくなります。。
- また、選挙当日は、本人確認が必要なのですが、この本人確認をとにかく厳しくする、例えば、学生証とか手に入りやすいものではなく、免許証を求めることとする。すると、政府発行書類を持っていない人や学生は、投票できない。
- こうした、「見かけ上は公平っぽい制度」ですが、結果「投票権の抑圧・社会経済的に不利な層を意図的に選挙から締め出す」ということになります。
- 締め出される人は、黒人やヒスパニックが多く、彼らは民主党よりです。そうすると、選挙権はく奪・抑圧は、共和党にとって一つの政治戦略になっているのですね。
- この本は、こうした、事実に真っ向から反論し、人々を励まし、選挙に出向かせ、社会変革を起こしていこうという気概から書かれた本です。
【洋書としてのレベル】
- 単語はやや難しいですが、ゆっくり読めばよめるレベルでした。
【感想・考察】
- 日本人からの視点とすると、結構考えにくいことが起きているのですが、僕の感想は「アメリカは住民票がない」ということが原因の一つかと思っています。
- もちろん州によって違うと思いますが、僕が住んでいたところは、日本みたいに転入届とかを出す必要がなく、そもそも州・市が誰がどこに住んでいるのか把握していないのではないかと、思っています。
そうすると、日本みたいに、選挙チケットを自動に送ることができないので、「登録」が必要になるのでしょうかね。。。 - そして、トランプ大統領の話に戻りますが、ここまで読んでくださった方にはもう分かると思います。「選挙制度そのものの正統性を疑うこと」自体、共和党が有利になるための戦略なのですね。
- 人々が、選挙の正当性を疑い始めると、「もっと本人確認を厳しくしよう」「郵便投票は怪しそうだからやめよう」とか言い始めるでしょう。そうすると、自然と、抑圧されている層がますます選挙に行きにくくなります。
彼らは民主党支持の傾向にあるので、共和党にとってこれは美味しい話なのですね。 - 実際には、彼女の活動もあって、ジョージア州では、久しぶりに大統領選で民主党勝利、今年の上院選でも民主党が勝利ということになりました。結果、バイデン政権は、下院・上院ともに過半数を獲得。この本は。選挙にいくことの大切さを改めて教えてくれますね。
以上です。 是非関心があれば、読んでみてください!
ゆずまる◎