【気候変動】『How to Avoid a Climate Disaster』by Bill Gates の感想・レビュー
こんにちは。ゆずまるです◎
今回は、Microsoftの創設者であり、今では慈善活動家でもある、Bill Gatesが書いた気候変動に関する本、『How to Avoid a Climate Disaster』です。あまり知識がない人にとっても読みやすく書かれています。
【一言でいうと】
- Microsoft から公衆衛生に軸を移したと思っていた Bill Gate が、ついに気候変動にまで活躍の場を広げてきた!
- エンジニア・投資家・開発の専門家・政治活動などの顔を持つ Bill Gates がその経験を踏まえて、現代社会の最大の問題のひとつの気候変動に対する処方箋を提案!
・・・という感じでしょうか。
【内容】
- この本を貫く信念として、Bill Gates は、温室効果ガスの排出を「減らす」のではなく、「ゼロ」にすることが必要としています。
- 一度排出された温室効果ガスは、ずっと大気中に残るので、「減らす」だけでは、気候変動を遅らせるだけで、これを止めるには十分ではないということですね。
そのため、「2030年までに X% 削減」というのも大事なんですが、「2050年までに『ゼロ』」というような目標を掲げることを重視しています。とにかくゼロ・ゼロ・ゼロ。これを達成しないといけない。 - 本自体は、エンジニアや投資家らしくロジカルかつMECEに、どこで温室効果ガスが排出されて、それをどうゼロにしていくのかを、順番に書いていきます。
- 温室効果ガスは日常のあらゆる場面で排出されています。例えば、
✔ 鉄・プラスチック・コンクリートなどの製造
✔ 発電(石炭・石油・天然ガス)とその使用
✔ 牛のげっぷ、豚の糞、トウモロコシの肥料生産
✔ 車や飛行機などの交通 などです。 - 日常の生活の全てにこうした過程が含まれているので、これをゼロにすること自体、本当にできるのか?と思いたくなりますが、クリーンエネルギー(太陽光・風力)や原子力発電への技術投資や、投資を後押しするような政策を総動員するように呼び掛けています。
- また、市民としても、気候変動へ積極的な政治家への投票や、電気自動車への買い替えなど、できることはあるのではないか。Bill Gates はそういう訴えています。
【洋書としてのレベル】
- 広く一般に向けての本になっているので、読みやすく、つまづくことはあまりなくいけます。少し、化学に関連した英語が出てきます。
【感想・考察】
- まず、Bill Gates すごいな、と。公衆衛生の分野で圧倒的な存在感を示してきている上で、気候変動にまで投資しているとは。。
- アメリカでは信じられないくらいの金持ちがいますが、こういう層が新技術にどんどん投資をしていくことで、また、アメリカで技術革新が生まれていく。そういうエコシステムを垣間見たきがします。アメリカの強さの一つですね。
日本でも、環境技術への投資というのが進んでいってほしいですね。 - 一方この前、New York Times の Podcast の The Daily で、公衆衛生の世界で資金力を生かして、巨人となっている Bill Gates に対してやや懐疑的な論調もありました。一個人が政府をしのぐ影響をもつ気持ち悪さ、というものです。
往々にして、開発分野は資金不足なので、Bill Gates の存在はありがたいと思うのですが、目立てば目立つほど、批判のようなものも付きまといますね。 - 次に、気候変動自体についてですが、一番問題を難しくしていると感じるのは、「自分がだした温室効果ガスが、自分『以外』の人の不利益になっている」という構造ですね。いわゆる、負の外部性です。
- 炭素税とか、排出権取引とかのツールはあると思うのですが、僕は、もっと一般に、市民ひとりひとりの意識を高めるというのが大事になってくると思います。「自分の出している温室効果ガスが、将来の自分の不利益になっている」ということが浸透すれば、個人の日々の行動や投票意識も変わるでしょう。
- 逆に、人々の温暖化に対する意識がなければ、もともとテクニカルだった気候の話題がさらに人々からかけ離れ、多国間でゴール設定をしても、「ただ上から押し付けられたもの」として、人々はオーナシップを持たないと思います。こういう本を通じて、人々の意識が高めればいいですね。
- アメリカでは、バイデン政権が、「グリーン・ニューディール」とか言ったりして、積極的な姿勢を見せています。日本でも、もっと気候変動が政策のトップに来るくらいの動きを見せてほしいです。
以上です。 Bill Gates の壮大なビジョンがみれます。是非、読んでみてください!
ゆずまる◎