【レイシズム】『The Sum of Us』by Heather McGheeの感想・レビュー

こんにちは。ゆずまるです◎

今回は、『Caste』に続き、レイシズム関連の本をもう一冊いきたいと思います。『The Sum of Us』です。レイシズムがむしばむアメリカ社会が進むべき、次の方向性を示してくれる一冊だと思います。表紙もすごいきれいです! 

 

f:id:ginoway:20210313104315j:plain 

 【一言でいうと】

  • 人種差別は、する側・される側、全ての人にとってマイナスになっている。今こそ、人種にかかわらず、協働することが必要であることを訴える!

    ・・・という感じですね。

【内容】

  • 表題にもありますが、この本のメッセージはすごい一貫していて、アメリカの「人種差別は、する側・される側、全ての人にとってマイナス」ということです。これを様々な点から明らかにしていきます。例えば、パブリック・プールの閉鎖や、人種でくっりきと分かれている教育システム、高額な医療システム、低い最低賃金、気候変動などです。

  • この点は気になっていたところで、大きな政府に反対している共和党も、オバマケアから恩恵を受ける人もいたり、COVID-19の経済対策でも恩恵を受ける層がいるわけなので、どうしてもこんなに、政党間の合意が取るのが難しいものなのでしょうか。。。人種ではなく、経済階層(Class)で人々はまとまることはできないのか?そんなことをよく思っていました。
  • この本はまさに僕の疑問と合致していて、公共サービスの充実は、人種にかかわらず全ての人に恩恵があるものなので、ゼロ・サムではない、と言っています。既得権益層ないしは白人層は、公共サービスの充実により多人種が社会のヒエラルキーをあがっていくと、自分らの利益を失うのではと恐れていますが、そのようにゼロ・サム」という関係ではなく、「全員がプラス」になるというようにフレーミングする努力が必要だということです。
  • 作者が例にあげるのは、パブリック・プールです。かつてアメリカでは素晴らしいパブリック・プールがあり、公共のものなのに、白人しか使えませんでした。1960年代頃から、人種隔離政策が緩和され、黒人なども使えるようになると、黒人と同じプールに入りたくない白人から、暴力も含めた、激しい反発があったそうです。

  • その結果、多くのパブリック・プールは閉鎖され、現在は駐車場になっているということ。白人は郊外にプライベートのプール付きの家に住んだり、会費制のジムを使っている。。。プールの事例は、「人種差別は、誰の特にもならない。ひいては公共サービスへの投資を減らすもの」という、アメリカで繰り返されてきた失敗の典型的なものということですね。

 

【洋書としてのレベル】

  • 単語は難しくないので読みやすいですかったですが、時間がかかりました。。。すごい分厚いですが、半分弱が、Noteに割かれていて、本文のところだけ見ると、薄く見えます。

【感想・考察】

  • 中身は納得のもので、作者の主張にもうなずくのですが、やっぱり、どうやって人々のマインドを変えていくのかの手段については、課題なのではないかと思います。

  • 作者は、本の中で、「本を読んだだけでなく、実際に経験することで人は変わる」と言っています。例えば、街の集会で、白人がヒスパニックの人の話を聞き、「自分と同じことで悩んでいる、自分と同じだ!」と気づいたのが、変わるきっかけということでした。
    なので、そういう経験の機会をどれくらい生み出し、共通理解を深めていくか、結局は地道な作業が必要なのではないかと感じました。

  • また、作者は、人種差別がない世界では、人はその人が大事にしているもの・関心があるものでつながる、とも言っています。これはその通りで、僕も海外の友達との話で盛り上がるのは、共通の関心事である政策の話だったりしますし、このことを胸にとどめておきたいと思いました。

  • 最後に、本の中で出てきた興味深い例として、アメリカの日産自動車の工場の話がありました。工場では、白人は危険性が低く負担が軽い仕事につき、それ以外の人種は肉体的に厳しい仕事を与えられ、工場内で人種による線引きが行われているというものでした。
    経営者側としては、労働者を人種で分け、労働者間で対立させることで、労働組合としての団体行動を妨げようという狙いだったそうです。日本の会社もこういう形でレイシズムを強化しているのに加担しているんですね。。。

 

以上です!是非読んでみてください!

 

ゆずまる◎