【ルーツ】『Dreams from My Father』by Barack Obama の感想・レビュー

こんにちは。ゆずまるです◎

今回は、オバマ元大統領による、『Dreams from My Father』です。最近の新刊(『A Promised Land』)と違って、政策の話は一切なし。オバマ元大統領のルーツを感じられる本だと思います。

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【一言でいうと】

  • オバマ元大統領が、家族や生い立ちなどの原経験をつづっています。ハワイやインドネシアでの幼少期、シカゴでのコミュニティ・オーガナイザーとしての仕事、そして、ケニアでの親族との出会い。彼のルーツが見れる。
  • 自分を、社会の中、あるいは家族との関係の中で、どう位置付けるか。また、大きな歴史の流れ中で、自分はどういう存在なのか、筆者の自問の旅を体感!

 という感じでしょうか。

 

【内容】

  • 筆者は、アメリカのMidwest出身の白人の母と、母がハワイで出会ったケニア人の父を持ちます。父は、筆者が幼い頃にケニアに帰り、離れ離れ。1回だけ、バラクが小学校の頃にハワイに来るのですが、それ以降は、大学生の時にその父が交通事故で亡くなったと聞くまで、会うことはありませんでした。

  • 自分の中で大きいけど、ぼんやりした父の存在を失ってから初めて、ケニアの父の郷土を訪れ、自分が想像していた姿との違いのギャップなど、複雑で、苦悩し、矛盾しているような「人間としての父」を発見していく、というのがストーリーの軸だと思いました。

  • これ以外にも、肌の色にまつわる偏見を受けた経験、母親や祖父母との肌の違い、黒人の白人への承認欲求への反発、シカゴに深く根を下ろした経済格差など、レイシズムに関連した経験が多く含まれています。

  • 筆者新刊の『A Promised Land』は、ホワイトハウスでの仕事ぶりの内容が大宗を占めていて、彼のルーツやレイシズム関連に深く言及した箇所は多くなかった気がしますのでこの本は、彼のこうした原体験を補完してくれました。

【洋書としてのレベル】

  • 僕のレベルでは、結構難しかったです。特に、バラクが自分の頭の中でいろいろ考えているところの英語が、抽象的に書かれていて、つかみきれない所も結構ありました。

【感想・考察】

  • この記事の表題を考えた時、アイデンティティにするのか「ルーツ」にするのか悩みました。父の死後、バラクケニアを訪れ、彼の物語を知り、墓前で涙を流すのですが、これは、彼の「自分はケニアのルオ族だ」というアイデンティティを高めたのでしょうか?

    そういう面もあったと思うのですが、彼はやっぱりアメリカ人で、アメリカ社会の格差にパッションがあったのではないかと思ったので、僕は「ルーツ」という言葉にしました。しっくりくればいいのですが。。

  • 次に、彼の政治スタイルとこのストーリーがどうつながっているのか考えました。白人と黒人のハーフ、母親や祖父母の愛、黒人としての経験やフラストレーション、草の根のシカゴでの運動、幼少期のインドネシアでの生活とケニアのルーツ、そして父親の頭脳・地位・プライド、どう影響しているのでしょう。

    ぱっと思いつくのは、Unity, Intersectionality, Multiculturality というような、分野横断的な要素。人々を結びつけるという象徴になり得、バラクも人々を結びつけるような仕事をしていたと思います。

    父親のストーリーは、どうでしょうか。ケニアからアメリカで学ぶ機会を得、最高学府にまで進学、ケニア政府内での成功、正義感が強すぎた故に追放された経験、経済的に困窮する中でも人に手を差し伸べる寛大さ。。。なんとなく、バラクにも引き継がれているような気がしますね、、「人」「人生」についての関心とか。これ以上は、他の方の分析をお願いしたいですw

  • それにしても、バラクはあんまり自分の気持ちを直接的に伝えるというより、むしろ、「こういう経験が胸に残っているんだ」ということを書くことで、間接的に自分の感じたことを伝えるスタイルなんじゃないかと感じます。そのため、読み手としては、一生懸命、バラクの気持ちを推察するんですが、合っているのか間違っているのか、分からない涙。

  • なので国語の試験問題として、良いのではないかと思っていました。例えば、、

    Q1. ラクが小学校のとき、クラスでもう一人しかいなかった黒人の女の子と遊 んでいました。それを見た、同級生がからかうのですが、バラクは「この子はガールフレンドじゃない!」と主張し、女の子は泣きながら走り去ります。なぜバラクはそうしましたか? そしてその時の気持ちは?

    Q2.   ラクが大学生のとき、NYにまで来た母親と、映画を見ます。その映画は、黒人などをキャストにしたストーリーで、母親は「昔みたときに、とても美しいと思った」と、映画に目を輝かせていたのですが、映画の途中で、バラクは見るのが嫌になり、母親と口論になります。なぜバラクは映画に苛立ちを感じたのでしょう?

    Q3. バラクは、何回か、「なぜ今までケニアを訪れなかったのか」と聞かれますが、そのたびに、「まぁなんとなく」という、曖昧な答えを繰り返していました。バラクはなぜ、曖昧な答えをしていたのでしょうか?彼の本当の答えは?

  • こういう、読み手に考えさせるシーンが多くあり、バラクについていくのが大変でした。。(特にこちらの知能レベルがバラクについていけない場合w)

 

以上です。多くの人が魅了された彼のストーリー、是非楽しんでください!

 

ゆずまる◎